Webレポート│深掘り!鴨川生活 ─ Vol.4
春先取り、果実の楽園。
首都圏で春が最も早くやってくる南房総。
見て、食べて、こころ春めく
旬真っ盛りのイチゴ農園を訪ねてみた。
温暖な気候に恵まれた鴨川では、年間を通して様々な農作物が栽培されている。日本列島が例年にない寒波に見舞われた今年の冬も野菜や果実が順調に育ち、早春を代表するフルーツのイチゴの収穫は、1月から始まり3月に最盛期を迎えている。
[チーバベリー][ふさのか]など千葉県のオリジナル品種が開発されるなど、房総半島ではイチゴ栽培が盛んだが、鴨川で始まったのは平成11年からで比較的歴史が浅い。鴨川観光のシンボルとして『みんなみの里』が創設された際、観光客が楽しめる体験施設が近くになかったことから、野菜農家の田村政彦さんが『ながさ観光農業組合』を立ち上げ、イチゴ狩りができる『田村農園』を創設したのが始まりだ。
摘みたてのイチゴを食べたお客様に「鴨川まで来た甲斐があった」と満足してもらうため、田村さんは長年培ってきた野菜づくりのノウハウを基に、鴨川初のイチゴ農園をオープン。甘くてみずみずしいイチゴを育てるため、水、光、気温を適切に管理できる3,000㎡にも及ぶ広大な面積のビニールハウスを設営した。1月中旬から5月初旬にかけて、『みんなみの里』に隣接したハウスと2㎞ほど離れた『たむらファーム』の2箇所でイチゴ狩りが楽しめる。
美味共演、イチゴのオールスター
当初は、比較的育てやすい6品種でスタートしたが、栽培方法を日々研鑽し現在では約15種類ものイチゴを手掛けている。お客様に「食べ比べを楽しんでもらいたい」のはもちろん、「多種多様なイチゴを極めたい」という探究心から、品種それぞれの形、色、甘味、酸味、香りなど個性が楽しめるイチゴを育てている。
大粒で甘く濃い味わいの[やよい姫]、光沢があり色鮮やかな[章姫(あきひめ)]など、果肉がしっかりとした品種をはじめ、やわらかくデリケートな[チーバベリー]、ピンク色の可憐な花をつける[桜香(おうか)]など、市場にあまり出回っていない稀少なイチゴの食べ比べが楽しめる。
しゃがむのが苦手な人のために、立ったままでもイチゴ狩りができるバリアフリースペースを用意。車椅子でも余裕をもって通れる幅が確保されている。
ハウス内では朝摘みのイチゴが直売されており、地元の方が次々と訪れる。新鮮な完熟イチゴならではの華やかな芳醇、みずみずしい食感、濃厚な甘味を、日常的に味わえるとは羨ましいかぎり。しかも様々な品種を日替わりで楽しむこともできる『田村農園』はイチゴの楽園だ。美味しさはもちろん、安心安全なイチゴを味わってもらうため、化学肥料は一切使わず有機肥料のみで栽培。千葉県独自の農産物認証制度『ちばエコ農産物』の認証を受けている。
フルーツという名の高糖度トマト
『みんなみの里』に隣接するハウス内では[フルーツトマト]も栽培されており、2月から5月までトマト摘みも楽しめる。トマトの木がずらりと林立するハウス内は、まさにトマトの森。たわわに実り、辺り一面が甘酸っぱい香りに包まれている。
[フルーツトマト]と名乗れるのは、糖度が果物並に8度以上あるトマト。田村さんは、甘味を凝縮させるため定植後は水を一切与えず、空気中の水分だけで育てている。たっぷり糖分を蓄えた[フルーツトマト]は、しっかりと実が締まり肉厚でジューシー。甘味はもちろんコクがあり、この味を求めて遠方から足繁く通う人も多いという。
鴨川産の南国フルーツ
また鴨川は柑橘系フルーツの生産も盛んで、文旦(ぶんたん)、八朔(はっさく)、伊予柑(いよかん)、甘夏ミカン、レモンなどが栽培され直売所の店先をカラフルに賑わせている。数年前、田村さんがマンゴーの苗を試しに植えたところ甘くて濃厚な実がなり、今では友人知人がこぞって欲しがるほどだという。
九州や四国など南国で栽培されているフルーツが収穫できるとは、なによりも鴨川の温暖さを物語っている。市内には、旬の鴨川産フルーツを使ったデザートを出してくれるレストランも多い。
真冬でも花が咲き、ポカポカ陽気に包まれる鴨川。イチゴをはじめ早春のフルーツが実っているが、生産量が限られるためそのほとんどが地元で消費されている。初めて来た人は、鴨川産フルーツのフレッシュで爽やかな美味しさにきっと驚くはずだ。「ここまで足を運ばなければ味わえないもの」「ここに来るまで知らなかったこと」鴨川には、まだまだたくさんある。
- 取材協力/
- 田村農園
〒296-0104 千葉県鴨川市南小町2034
TEL.090-8313-5611
営業時間:9時~16時(不定休)
取材・文/山内泉